●国家法典の完成● |
●統治組織● |
◆国名につく近遠・上中下・前中後 分離・併合を繰り返したため、古代の国数は一定していません。712(和銅5)年には58国でしたが、823(弘仁14)年には66国となりました。 遠近、上中下、前中後のついた国名は、都から放射状に延びた七道に沿って近遠、上中下、前中後の順に並んでいます。たとえば、都に近い湖(近つうみ)である琵琶湖があるので近江(おうみ)、都から遠い湖(遠つうみ)である浜名湖があるので遠江(とおとうみ)。吉備(きび)国を三分して、都に近い方から備前(びぜん)・備中(びっちゅう)・備後(びんご)というように。 ところで、上総(かずさ)・下総(しもうさ)は、一見すると、この原則が当てはまらないように思われます。実は、関東平野の東京湾近辺は大小の河川が乱流していて低湿地が多く、交通の障害となっていたため、当初の東海道は、相模(さがみ)の三浦半島から海を渡って上総に延びていたのです。つまり、最初の時点では、上総・下総の配列も、この原則にしっかりと従っていたのです。 しかし、次第に河川の通過もできるようになったので、武蔵(むさし)を通過して下総に至るようになりました。これ以後は、武蔵は東山道ではなく、東海道に属することになりました。 【参考】 ・宮内正勝・阿部泉『手に取る日本史教材』1988年、地歴社、P.47を参照 |
●交 通● |
●官 制● |
神祇官 | 太政官 | 省 | 衛府 | 大宰府 | 郡 | |
長官 | 伯 | 太政大臣 左大臣 右大臣 |
卿 | 督 | 帥(そつ、そち) | 大領 |
次官 | 大副 少副 |
大納言 | 大輔 少輔 |
佐 | 大弐 少弐 |
少領 |
判官 | 大祐 少祐 |
左・右大弁 左・右中弁・ 左・右少弁 少納言 |
大丞 少丞 |
大尉 少尉 |
大監 少監 |
主政 |
主典 | 大史 少史 |
左・右弁大史 左・右弁少史 大・少外記 |
大録 少録 |
大志 少志 |
大典 少典 |
主帳 |
●司法制度● |
●民衆支配のしくみ● |
●民衆の負担● |
●身分制度● |
◆私は賤民になりたい 『万葉集』に、次のような和歌が収められています。 橡(つるばみ)の衣(きぬ)は人皆事なしといひし時より着ほしく思ほゆ 「ドングリを煮出して染めた黒い衣服を着ている人は煩わしいことがない、というのを聞いたときから黒い服を着たいと思った」という意味です。黒は賤民が着る服の色なので、この和歌の作者は、良民身分を捨てて「賤民になりたい」と言っているわけです。 なぜ「賤民になりたい」のでしょうか。その理由については、「これはなまじ身分があつて物思ひの絶えぬ人が賤者を羨ましく思つた意と見るべきである」と理解されています(澤瀉久孝『萬葉集注釋・巻第七』(普及版)1983年、中央公論社、 281ページ)。 しかし、山上憶良は「貧窮問答歌」に、税負担に追われて困窮した良民の姿を詠んでいます。こうした良民が「税負担を免除された賤民身分を羨んだ」とする解釈も可能でしょう。 安井俊夫氏は、後者の解釈にしたがって、「橡の…」の和歌を題材に取り上げ、律令制下の農民負担の重さを中学生に考えさせる授業実践を報告しています(安井俊夫『子どもが動く社会科−歴史の授業記録−』1982年、地歴社)。 |