「いってえ人間ほどふてえやつは世の中にいねえぜ。ひとのとった鼠をみんな取り上げやがって交番へ持って行きゃあがる。交番じゃだれが捕ったかわからねえからそのたんびに五銭ずつくれるじゃねえか。うちの亭主なんかおれのおかげでもう一円五十銭くらいもうけていやがるくせに、ろくなものを食わせた事もありゃしねえ。おい人間てものあ体のいい泥棒だぜ。」 (夏目漱石『吾輩は猫である』1965年、旺文社文庫、P.16)